さよなら・・

 

『さよなら』

 

『うん、さよなら』

 

私は何気なく言った。いつものさよならだった。

 

彼女はちょっと私を見つめ、微笑み、小さくため息をつくと背を向けた。

 

私も彼女に背を向けた。でも・・ふっと振り返る。彼女の背が小さく見えた。

 

ほんの小さな不安。でもそれは大きな悲しみの足音だった。

 

次の日彼女は死んだ。突然にあっけなく彼女は私の前から永遠に姿を消した。

 

なんの前ぶれもなく彼女は私の前から消えてしまった。

 

それ以来私は彼女の背中を見つめ続けている。

 

あの小さく感じた背中を今も見つめ続けている。

 

永遠に追いつくことにない背中を追い続けている。彼女に再び会うために・・。

 

一つ変わったこと。それはその日以来、さよならと言う言葉を使わなくなったこと。

 

さよならは別れの言葉。でもそこには再びがない。

 

私にとってさよならは永遠の別れを意味する。だからさよならは言わない。