多摩川のアオサギ

 多摩川のアオサギについて、私が調査研究した結果などについて掲載しております。


1. 多摩川流域でアオサギが確認されている地点

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2. 多摩川中流域におけるアオサギの繁殖生態(日本野鳥の会発行 Strix vol.17に掲載)

 多摩川中流域にある、最近形成されたアオサギの集団繁殖地において、繁殖期間と経過、巣数、採食場所について1997年に調査した。この集団繁殖地での全体の繁殖期間は、2月中旬〜9月上旬だった。1つの巣の繁殖期間は約102日で、巣立ったヒナの数は3羽が多かった。採食場所は多摩川と大栗川の合流点附近で、集団繁殖地から約1km離れていた。しかし飛行経路の観察などから、ほかの場所にあることも考えられる。(本文要約)



3. 多摩動物公園におけるアオサギコロニー内での営巣木選択
(○白井剛・鈴木惟司/動物行動学会2002年大会で発表)

 アオサギ Ardea cinerea はコウノトリ目サギ科に分類される鳥で、全長約93cmと、日本産のサギでは最大の種である。アオサギを含むサギ類は、樹上に集団で巣を作って集団繁殖地(コロニー)を形成することが知られている。樹上に営巣する鳥類の営巣場所の決定要因には、隠蔽度や樹高が関連していると言われているが、アオサギにおいて営巣木の選択性があるかどうかはよく分かっていない。東京都日野市にある多摩動物公園のアオサギのみの繁殖地で、営巣選択性があるかどうかを調べた。繁殖期間終了後に繁殖地の林で立木調査を行い、胸高直径、樹高、樹種について立木全体と営巣木で比較した。その結果、アオサギは木の高さではなく、太い木に好んで営巣し、また樹種ではヤマザクラを好むことが示された。これらの木を選択する理由について巣の安定性という視点から考察する。(講演要旨)



4. 多摩動物公園の野生アオサギの、繁殖期後期における分布
(日本鳥学会2005年大会で発表)

 東京都日野市にある多摩動物公園の園内で、野生のアオサギが集団繁殖地している。繁殖期後期(6月〜9月)に、この繁殖地の成鳥や生まれた幼鳥が、どのように分布しているかは、良く分かっていない。当地で、2003年よりアオサギの標識を行い、標識したアオサギがどのように分散しているかを、追跡している。今回は、これまでに確認した、標識されたアオサギの分散について報告する。
 アオサギの捕獲は、東京都多摩動物公園の協力により、園内のツル園に設置されている、園内に放飼されている鳥を捕獲するための箱わな(幅6.5m×奥行4.0m×高さ1.6m)を借用して行った。箱わなの中に放飼鳥に与える魚が入れられており、その魚を採食するためにアオサギが箱わなに入ったところを、入口を閉じ捕獲した。
 捕獲した個体は、個体識別用の足環を左足の踵の上につけて放鳥した。足環は、Gravoply社製2色貼り合わせプラスチック板を、高さ約27mm、直径約15mmの筒型に丸めてつくり、表面に数字を掘った。この足環の色は、年ごとに組み合わせを変えた。
 足環は、2003年〜2004年に、成鳥12羽(2004年12羽)、幼鳥30羽(2003年17羽、2004年13羽)にとりつけられた(2005年も継続中)。このうち、2005年の繁殖期に再確認できた個体は、成鳥12羽、幼鳥3羽(2003年3羽、2004年0羽)だった。
 標識した鳥の追跡を、園内と園外で行った。園内での観察は週1回〜2回行い、園外では園から半径10km以内にある、多摩川、浅川の調査地を月1回観察して回り、標識されたアオサギを記録した。また、目撃情報を収集し、標識アオサギの分布地点についてまとめた。
 アオサギの標識成鳥は、多摩動物公園の園内では繁殖期後期において2003年3羽、2004年4羽、2005年9羽(7月末現在)だった。一方、同じ時期、園外では2003年0羽、2004年5羽、2005年4羽が確認された。これらのアオサギが確認された場所と園との距離は、1.6km〜33.8kmだった。近い場所で見られた個体には、園との間を行き来しているものもいた。しかし個体の一部には、2004年の繁殖期後期は園内では確認できず、2005年の繁殖期に園内の繁殖地で確認されたものもいた。これらの個体は、非繁殖期の生息場所として園内を利用しておらず、翌年の繁殖期に再び戻ってきたものと考えられた。
 幼鳥については、標識個体30羽のうち、園内、および園外で再確認できたのは、のべ3羽だけであった。また、番号が不明の個体1羽は、光が丘公園サンクチュアリ佐藤氏からの情報により、園から約25km離れた東京都練馬区光が丘公園で確認された。幼鳥は、繁殖期後期には多摩動物公園内に残留しておらず、広く分布しているものと考えられた。なお、2005年の繁殖期に、幼鳥で標識された1個体が園内で繁殖するのが確認された。


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